生名島
広島と愛媛を緊密に繋ぐ県境の島
生名島/Ikina-jima
▲土生港長崎桟橋
▲左に補給艦とわだが泊まる因島。奥に弓削島
▲港務所にある合併記念碑の上島四兄弟
▲生名橋記念公園から見る生名橋
▲村上姓の商店
▲謎の巨石メンヒルのある三秀園
▲サウンド波間田の屋外ステージ
▲島の西部の海岸線。岩城島は目の前
▲立石港の目前に見える因島の明かり
生名島の立石港までは、因島の土生港長崎桟橋からフェリーで3分。20分間隔で運行されていて、渡し船感覚で行ける。平日は朝7時台、夕方5時台は10分間隔というから驚きだ。そして最終は23時台と因島との深い繋がりを物語る。船で行く島は、フェリーの時刻表で一日の予定が決まるのだが、これだけ緊張感のないフェリーは初めて。拘束されるものがひとつ減るだけで、気分は随分と楽になる。乗船し、船側の客室で何を撮ろうかと戸惑う間に生名島に着いてしまった。
桟橋に隣接する立派な建物が立石港務所。中は空調がよく効いてテレビもあり快適。建物の規模から売店があるだろうと見込んだのだが、広く清潔な空間に自販機があるだけ。これには少し拍子抜けしてしまった。ガイドマップを入手後、島内を時計回りに出発。新しく佐島との間に架かった生名橋を見にゆくことにした。車窓には海を隔て3年前に行った弓削島が見える。生名島の役場のクルマや案内図、看板に村の名残がある。平成の大合併で生名村から上島町に変わったからだ。
弓削島・岩城島・生名島・魚島の4島を上島町が上島四兄弟と名付け宣伝広告を展開している。地図を見ると上島町は4島どころではないと気づき、疑問が浮かぶのだが、弓削町(弓削島・佐島・豊島・百貫島)・生名村(生名島)・岩城村(岩城島・赤穂根島・津波島)・魚島村(魚島・高井神島)の1町3村が合併した上島町。役場のあった4島がそれぞれの代表になったようだ。他に鶴島・平内島・瓢箪島・江ノ島・亀島・能小島・坪木島・・・上島町は全部で20近い島数になる。
2011年2月6日完成の生名橋。総事業費77億円、長さ515m。佐島と弓削島の間には既に弓削大橋が架かっているので、これで3島が橋で繋がったことになる。橋を歩いて佐島へ渡ってみる。右に赤穂根島、左に弓削島。好天で眺めが良く、潮風が心地よい。青い海に白い航跡を引く船が爽やかに目に映った。佐島を回って再び生名島に戻り、生名八幡神社、厳島神社のある生名港周辺を回って立石港へ戻る。立石港務所はサイクリストの休憩所『しまなみサイクルオアシス』でもある。
立石港からの道を歩いていて気づいたのは村上姓が多いこと。すぐに思い浮かぶのは、水軍で有名な三島村上氏。能島、来島、因島の三家からなる村上氏の本拠地のひとつが目の前であることを考えれば、多くの村上姓があるのも不思議ではない。立石から反時計回りに島を進み、弥生時代の遺物と言われる巨石メンヒルがある三秀園に立ち寄った。巨石は原産地不明で、海上運搬された物だと説明にあった。鎮座する巨石を前に立石という地名の元は、この石なのではと想像を巡らせた。
サウンド波間田(はかんだ)キャンプ場は、野外ステージ付き。目の前には更衣室・シャワー室完備の海水浴場が広がる。芝生広場から海を背景に建つステージを見れば、夏のイベントを想像せずにいられない。すぐ近くの立石山には、展望台があるのだが、朽ちて登れないという残念な状態だった。夏場だけでも展望台へ続く遊歩道や噴水広場、登山道を手入れすれば、島外から人を呼び込むのに良い施設。島内に立派な施設が目立つだけに、なんとかならないものかと思った。
更に島を南下し、クルマエビの養殖場のある恵生の集落を回っていると、遠く排気音が聞こえてきた。商工会青年部員がたった一人で作り上げたというミニバイク専用の生名サーキットからのものだ。恵生から海岸線を走り、スポーツ合宿村いきなスポレク公園へ。野球場、体育館、温水・屋外プールを併設し、宿泊施設蛙石荘(がーるいし荘)と合わせ、合宿・研修を勧める施設。高台にあり眺めもよく、瀬戸内の自然の中スポーツで身体を動かせば、心身共に健康になれそうだ。
島内を回ってみての印象は、昔懐かしいという町並みが残るというのではなく、今風の住宅が多いこと。そして大きな耕作地や果樹園があるわけでもなく、港に漁船が多く並んでいるわけでもなく、大きな工場や造船所もないことから、一体この島の人達は何で生計を立てているかという疑問がわいた。そして因島へ働きに出ている人が多くを占めるのではないかということに思い至る。事実因島の造船所への就業者が多く、その撤退を受け大きな影響を受けたという過去がある。
生名サーキットや、いきなスポレク公園などの独自の町おこしを成した生名島。架橋で佐島・弓削島と繋がり、見えて来る将来像とはどんなものなのだろう。観光面で見るならば、来島者にとって三島を気軽に行き来できることが、とても魅力的に映った。しかし生名島自体は観光で活力を得るというよりも、本来の姿である住む島という印象が随所に強く、因島との緊密な関係がこれからも県境を越えて続く限り、渡船は残り人が減り続けてゆくことはない島なのだろうと思った。
文/ナワタミツル
参考資料/日本の島ガイド シマダス
-生名島DATA-
◎所在地/愛媛県越智郡上島町
◎面積/3.67k㎡
◎宿泊施設/あり
◎お食事処/あり
◎公衆トイレ/あり
◎駐車場/あり
・無料駐車場 多数
◎島内交通手段/あり
・レンタサイクル( 詳細はコチラ )
・町有バスあり
※但し、日曜日・祝祭日及び年始は運休
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