封印された日本の離島|歴史ミステリー研究会/編者|
第1章・人を寄せ付けない禁断の島。第2章・有名な島の知られざる事実。第3章・独自の歴史や文化を持つ島。第4章・めずらしい神々が住む島。と4章に分けて島を紹介。個性的な特長を持つ島のプロフィールを集めて構成した本と説明するのが、一番的確だろうか。島以外に干瀬、海堡(明治・大正期に要塞用につくられた人工島)、諸島、海域というくくりがあるため、紹介される島の数は52という項目数と同数にはならない。帯風の表紙レイアウトに目を惹くコピーが踊るが、1島が4ページで扱われているため、深く掘り下げた内容を期待するのは酷である。島好きならば、関連写真と地図が掲載されているだけも立派だと思える余裕が欲しい。読み進めると有名どころの島も出てくるが、巻頭に記された6852という日本の離島数を思えば、それはほんのごく一部に過ぎず、まだ多くを知られていない島、興味深い島があるのだなと改めて思う。歴史や史跡、文化や民俗学等、自分が興味を持てる分野の島から入り、更に調べてみる。ページの前後に存在する別分野に属する島に興味を持ち、行ってみようと思うことになれば、多くの島を謎めいた言葉で紹介する本書は、ネット上の情報検索では狭まりがちな視野を広げ、身近な島へ繋がるきっかけ作りになる本と言えるだろう。
NAWATA
封印された日本の離島
編者/歴史ミステリー研究会
出版/彩図社
定価/550円(税込)
※Kindle版は、476円
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海士伝 隠岐に生きる|赤嶺 淳/監修 阿部裕志・祖父江智壮/編者|
海士町は、島根県沖の隠岐諸島の中ノ島にあり、Iターンの町として有名になった島。表紙にあるように、この本は『聞き書き』によって構成されている。登場する話者6人は、海士町に住むということ以外、年齢も性別も仕事もバラバラであり、Uターン、Iターン、島から出ずに留まる人と、島との関わり方も様々。海士町で生きてゆくと決意した人達の個人史を実習で訪れた名古屋市立大の学生18名が聞き書きし、まとめたことで『島の宝は、ひと』というキーワードが見えてくる。調査される側だけでなく、巻末にまとめられた調査した側である学生達の体験記も興味深い。初めて訪れる離島での様々な経験は、自分達が進める島巡りの面白さに重なり、再認識させられたところもあった。「離島社会は日本社会の縮図であり、離島がかかえる問題は列島全体の問題である」ならば、失われた20年に育ち、少子高齢化で将来の見通しが立てにくい現在の生活から、元気の良い離島社会である海士町に降り立ち、島生活を体験した学生達は、これからの人生に何らかのヒントを得たのではないだろうか。読者も多様な生き方を知ることで、学生達と同じように色々な手掛りを見つけ出せるのではないかと思う。そして人と関わることで生まれる意識の変化もまた宝だと気づくことになる。
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海士伝 隠岐に生きる
監修/赤嶺 淳
編者/阿部裕志・祖父江智壮
出版/新泉社
定価/1,050円(税込)
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宮本常一写真図録 第一集
瀬戸内海の島と町 広島・周防・松山近辺
|森本 孝/監修 周防大島文化交流センター/編者 宮本常一/写真|
宮本常一は山口県周防大島生まれの民俗学者であり、日本の民俗学に残した功績は今更言うまでもない。この本は宮本常一資料館とも呼ばれる、周防大島文化交流センターで行われた企画展『瀬戸内海の島と街 人と暮らし』を元に、宮本とゆかりある7人が文章を寄せ、再編集されたもの。図録であるから文章量もほどよく、飽きることなく最後まで読める。収録されている場所は、山口、広島、愛媛県に渡る西部瀬戸内海の沿岸都市と16の島々。昭和30年代の島びとの暮らし、島の風景をまとめて見られ、的確なキャプションが添えられていることで資料性が高いと感じた。また無人島になる前の島の風景など、貴重な写真も目にすることができる。航空写真も数点あり、そこに写る山頂まで切り開かれた島々の姿に驚く。同時に当時の島が抱える人口の多さにも気づかされ、一枚の写真にこもる力のひとつを教えてくれる。巻末には、一本のネガのベタ焼きが「車窓の風景」と題されて収めらている。撮ったコマを追いながら、1961年のある一日を宮本が何に注目し、シャッターを切ったのかを見てゆけるのも面白い。この半世紀の間に、いかに生活が変化したのか、何を手に入れ何を失ったのか。今となっては、別世界とも言える瀬戸内の写真から、考えさせられることは多い。
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宮本常一写真図録 第一集
瀬戸内海の島と町 広島・周防・松山近辺
監修/森本 孝
編者/周防大島文化交流センター
写真/宮本常一
出版/みずのわ出版
定価/1,800円(税別)
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私の日本地図6 瀬戸内海II 芸予の海|宮本常一/著者|
この本は昭和44年に発売された物の新装版である。出版社が変わり、新しく販売するにあたり、訂正の他に掲載写真の撮影年月日が追記されている。発売当時の付録であった航路入りの地図も復刻して付いており、裏面には当時瀬戸内海を渡った汽船・水中翼船の時刻表も載っている。発売時であれば、すぐにでも記載場所へ行けたわけだ。よく行く図書館では貸出し禁止であったため、再販は個人的に嬉しいの一言。瀬戸内の暮らしを知る資料として手元に置きたく、迷うことなく購入した。記述があるのは三原、尾道、福山近辺といった沿岸の街と20近くの島々。当時を伺い知る写真は、数えてみたところ昭和30年代を中心に277点。決して読むだけの民俗学の本ではない構成になっている。島の漁業や農業という産業、文化や風習についての考察に加え、島びとの生活感溢れる写真などは勿論、木造船の写真が多く収められているのも、この本の魅力だろうと思う。『私の日本地図』シリーズは、紀行的文化論の趣をもつことから、旅へ気軽に携行できることを考慮した装本にしたそうだが、自分の場合は文庫サイズでない限り撮影機材を持った上に、この本を持ってゆく気には正直なれない。読んでから島へ行くか、またはその逆で机上でじっくり向き合い、島へ想いを巡らせたい。
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私の日本地図6 瀬戸内海II 芸予の海
著者/宮本常一
出版/未來社
定価/2,200円(税別)
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