『上関・長島』を写真と紀行文で紹介 | 島プロジェクト

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ReportNo-26.png長島
瀬戸内交通要衝の歴史を持つ島
上関・長島Kaminoseki-Nagashima

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▲夏の熱気に霞む伊予灘
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▲細かい作りが面白い四代港の眺め
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▲島らしい路地が続く四代の集落
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静かな森に不思議な雰囲気を放つ祠
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白井田を見下ろす高台。牛島が見える
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井戸端に石仏。これは他で見ない風景
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家の密度が路地歩きを期待させる
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小さな風景を拾い歩いた上関の集落
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▲上関港の静かな夕暮れ

室津半島南端から上関大橋で長島へ。向かい合う室津と上関は、北前船や朝鮮通信使船が寄港し、港町として発展した歴史ある場所。藩が番所を設けるほど重要な港であり、さらに遡れば、水軍の海城があったことでも、ここが瀬戸内交通の要衝の地であったことが分かる。上関を通り過ごし、南端の四代(しだい)へ向う。地形的に海沿いの道は僅か。崖上を通るように道は続き、時折伊予灘が視界に広がる。道が整備されていない頃、集落間の徒歩での移動は困難であったろうと想像する。

四代は上関宰判御番所御勘場、つまり藩の支所が置かれていた場所。施設は上関へ移行することになり、現在は石碑が僅かにそれを伝えるのみ。施設の跡地が小・中学校それぞれの敷地になったのではないかと思われるが、その小中学校も更地となり、石碑と僅かな痕跡しか残っていない。高台にある小学校の校庭からは集落を一望できる。眺望を楽しみながら、おおよその順路を自分なりに決めて港へ下りる。港に駐車場があるが、釣り目的だと有料。機材を持って路地に入った。

石積みの壁や家の基礎。板張りの壁など昔ながらの風景が多く見られ、歩いていて楽しい。縫うように巡り、歩き疲れたら港へ出て、海を眺めて一休み。そんな時に商店があるのも頼もしい。集落北端には正八幡宮。季節柄、公衆便所の中に燕の数家族が子育て中。軒の深い集会所と診療所を兼ねる建物は、営巣地のような賑わい。燕が減りつつあると言われるが、ここは全く無関係のよう。飛び交う多くの燕を見て嬉しくなった。ちなみにこの建物の名は『ひなの里よりあい館』

蒲井は海へ長く伸びた防波堤が目立つ。漁船は少ないが連絡船が寄る港で、駐車場はここもレジャー目的の場合は有料のようだった。港の横の浜辺には、家族連れの姿。静かな集落に歓声が時折響くような静かな場所。集落は、海に並んで軒を連ねるようにある。防波堤は勿論あるが、浜辺に建っているかのように海が近い。海辺から神社の境内ともいうべき蒲井八幡宮樹林へ入る。日中でも暗い山中には、謂れのわからぬ祠が数基存在し、なんとも不思議な空間を作り出していた。

蒲井から背中合わせのようにある白井田へ尾根を越えて向う。道は集落を回り込むように港へ下ってゆく。道路端に立てば眺めが良く、集落が海を見下ろすように広がっているのが分かる。道を下りきり、埋め立て地と思われる公園に車を止めて港へ向う。港から見上げる斜面に家々が並ぶ。古い家屋ばかりではないが、瀬戸内の島らしい風景といえる。昔の写真があるものならば、見てみたい。そう思わせる風景にしばし見入る。見上げた先の怪しい雲行きに、足早に集落へ入った。

高台から見下ろした集落の中、当然傾斜が多い。細い路地を上に下にと歩き回り、白井田集落の特徴に気づいた。それは見かけた井戸に、必ずと言ってよいほど石仏があったことと、空き家は壊され更地になっていること。斜面に隙間無く建つ家々。一軒なくなることで、周りの家には光が入り、不審火などの心配もなくなる。他者がもったいないとか、再利用などと言うのは簡単だが、実際に住み、生活する者からすれば、空き家対策の最善策なのかもしれないと考えさせられた。

路地を登り切った高台にある白井田小学校は休校中。緑に覆われたグランドから海を見下ろし、風に吹かれながら一息つく。空は更に怪しくなってきた。遠雷を聞き、集落内を横切ることを心がけて再び路地へ入る。高低差があり、歩き応えがある白井田。密度の高さは、歩いた分だけ発見がありそうで、好奇心が暑さと疲れを忘れさせる。四代、蒲井、そして白井田も集落の北端に八幡宮があった。これが偶然なのか、決まり事なのか気になるところ。港へ出ると雨が落ちてきた。

雨があがり、上関は比較的涼しい中で回ることができた。港を北上し菅原神社まで行くと、島の方々に祭りで神輿が集落を回っていると教えてもらう。先回りをして高台にある竃八幡宮の石段で待っていると、間もなく鳴り物と共に神官を伴う一行が現れた。神輿は違う道より車で境内に上げるという。担い手不足の顕著な例と言え、島の実情を垣間見た気がした。集落内を歩いていると、テレビや映画で見た上関町役場があり、ここが原発誘致で揺れる町だという事を思い出させた。

集落規模と人とのバランスに違和感を覚えた上関。夕暮れも手伝ってか、どこの集落よりも寂しく感じた。架橋から44年。人口流出だけに橋が役立ったとは思いたくない。長島は、歴史的建築物の移築や跡地の整備、石碑のみ等、歴史好きにとっては少し寂しい。しかし、それだけが島の魅力であるわけでなく、長く複雑な島の形が生み出す景観や、集落ごとの特徴など見所は満載だ。それだけに、島内に5つある集落の内、戸津(へつ)地区を回れなかった事が心残りとなった。

文・写真/ナワタミツル
参考資料/日本の島ガイド シマダス 


-上関・長島DATA-
◎所在地/山口県熊毛郡上関町
◎面積/13.73k㎡
◎周囲/35km
◎宿泊施設/あり(要予約)
◎お食事処/上関地区にレストランが1軒。その他は要予約。
◎公衆トイレ/あり
◎駐車場/あり 
※レジャー目的の場合は有料
◎島内交通手段/なし
◎備考/各集落に自販機があるので、飲み物に困る事はない。


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